第7章 episode.7 壊れた鍵
パン屋にたどり着いた。
街角にある、小さなパン屋。
外国から来ている子だから、折角なので一押しのメニューを教えてくれ、と店主に伝える。
テイクアウト専門らしく、バター多めで甘い生地のクロワッサンが自慢なんだと。野菜やハム、チーズ等。好きな具材をサンドしてもらえるらしい。
それを彼女に日本語で伝えて、店主と英語で会話をして。
本当に通訳にでもなった気分だなんて思いながら、オーダーを終えて、パンを包んでもらう間待っていたら…
「シュウさんって本当、日本語も英語もペラペラですごいですよね…」
と、感心したようにユリが呟いた。
「…育った環境の影響だ。俺がすごい訳じゃないさ。…ちなみに俺はイギリス訛りなんだが」
つい、ポロッと自分のことを話してしまった。
まあ、これくらい…いいだろう。
なんて思っていたが、彼女は予想以上に目を輝かせて俺を見上げていた。
「イギリス…?でもここはアメリカだし…えっと…?シュウさんの不思議がますます深まりました…」
と、言う割には楽しそうだな。
まるで、俺のことを知っていくのを楽しんでいるように見えるが…。
「あの…実はシュウさんのこともっと知りたいんですけど、気になってることがいくつかあって…聞いてもいいですか?」
………。
「そう言うことを言うな…変になりそうだ」
またもや、本音が漏れる。
俺の心を揺さぶるようなことをそれ以上言わないでくれ。
「え?あ、えっと。聞いちゃダメでしたか?そうですよね…出会ったばっかなのに、早とちりしちゃいました」
シュン、と…残念そうにするユリ。
こちらの気も知らないで…。
…と言っても知る由もないか。