第7章 episode.7 壊れた鍵
「もう一緒には寝れないな…」
俺は呟きながら、そっと彼女を横抱きに抱き上げる。
想像以上に小さくて軽い体を、寝室のベッドに運んで寝かせた。
そして、俺自身は寝室を出る。
シャワーを浴びて、そのまま書斎に向かった。
書斎にはベッドもソファもない為横にはなれないが…
今は1人になった方がいいだろう。そちらの方が優先だ。
革張りの椅子に腰掛け、腕を組んでそのまま目を瞑った。
寂しいが。
彼女も自分1人で眠れるようになった訳だし。
それに…自覚してしまったからには、もう…そういう訳にもいかないからな。
残りの数日、少しきついが。
彼女とは離れて過ごした方がいいだろうな。
そんなふうに思いながら、俺はそのまま眠りについた。
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コンコンコン。
コンコンコン。
ドアをノックする音がする。
『シュウさん…?いるんです?』
その声に目を覚ました俺は、すぐにぐるりと辺りを見回した。
…そうだった。俺は書斎の椅子で寝たんだったな。
椅子から立ち上がると、肩が鈍い音を立てた。…流石にきついな。
「…ユリ。ここにいる」
『あ、お仕事中でしたか?すみません。』
ドア越しに話をしながら書斎から出ると、ルームウエアのまま、まだ少し寝癖がついているユリが姿を表した。
「朝起きたらシュウさんの姿は見えなかったけど、靴が玄関にあったから。つい探しちゃいました。」
「ああ…いや。夜中に帰って少し調べ事をしていてな。そのまま書斎で眠ってしまった」
ユリの目は見れなかった。
軽く、とは言え…寝ている彼女に勝手にキスをしてしまった罪悪感か。
それとも気付いてしまった己の感情にまだ追いついていないのか。