第6章 episode.6 キスなんて
その日の夜。
シュウさんのいない、シュウさんのうちで1人ぽっち。
ご飯も1人で寂しく食べた。
退屈で、時間が過ぎていくのが遅くって。
ついつい、ぼーっと物思いに耽ったりしてしまったんだけど。
その都度頭に浮かんでくるのは…
シュウさんの名前、しゅういち、という新事実について。
暇すぎて、スマホで「しゅういち」と打ち込んでは変換してどんな漢字を書くのかな?と想像してみたり。
それから。
昼間、シュウさんに抱きしめられた時のことだった。
妹みたいな存在だと思っているから、不安そうな私を抱きしめて慰めてくれたんだろうと最初は思ったんだけど。
よくよく考えてみたら…いくら相手を慰める為とは言え、恋愛関係でもない異性を抱きしめたりしないよね?
「うーん…」
…やっぱりアメリカンだから?
“ハグなんて挨拶の一種じゃないか”なーんて。こちらの人は言いそうだし。
なんなら…“キスなんて挨拶”くらい…言いそうだよね。
…ん?
「…キス?」
キスといえば。
ふと、自分の唇に触れて感触を確かめる。
フニ…
「!!」
あっ……えッ!?
わ、わ、わかったかもしれない…
昼間にシュウさんが私を抱きしめながらしたこと…
もしかして…キス?
「えっ、ええっ」
思わず、1人でリビングのソファに座ったまま声を上げてしまった。
途端に顔がポウっと熱くなった。
待って待って。
名前のことやら…
抱きしめられたことやら…
頭に…?いや、髪に、という表現が正しい?…よくわからないけど。…唇同士でないとは言え、キス…された?かもしれない…こと。
色んな驚きが頭の中で大渋滞して、パンクしそう!
「…うぅ…次シュウさんに会ったらどんな顔すればいいかわからない…」
ていうか、色々…聞きたい。
名前のこともそうだけど、なんであんなこと…してきたのか。
あと…なぜ私に優しくしてくれるのか、と尋ねた時に…彼が返した言葉。
『知らない方がいい気もするんだがな。お互いの為に』という、よくわからない台詞のことも…
「…どうしよう、どうしよう…」
頭の中はモヤモヤ、気になることがグルグル…
こんなんじゃ…
「こんなんじゃ、寝れるワケないじゃない…」