第6章 episode.6 キスなんて
出来上がったサンドイッチのプレートは…サラダとスープ付き。
アンソニーさんは一応、お客様だからね。
シュウさんからは簡単でいいって言われたけれど、そんなに疎かにしてはいけないだろうと思って。
2人分のプレートの乗ったトレーを持って、書斎の方へ向かう。
分厚く重厚感のあるドアをノックした。
しばらくすると、中からシュウさんが現れて。
トレーが通る程度だけドアを開けて、ありがとう、と一言だけ言ってサンドイッチの乗ったトレーを持って行った。
その時、隙間からは少し書斎の中が見えたけれど…薄暗い部屋ということくらいしかわからなかった。
なんだか…映画に出てくる悪役のアジトみたいな暗さのお部屋。
そんなお部屋でどんなお仕事の打ち合わせをしているのやら。
…そういえば、勝手にミュージシャンかな?なんて思っていたけど、実際どんなお仕事している人か知らないな。
ていうか…私って…。
シュウさんのこと何にも知らないな。
いや…まぁ、ただ居候しているだけの関係だし、そもそも数日前に出会ったばかりだし仕方がないと言えばそうなんだけど…。
あまり多くを語らない人ということもあるけれど…
もうちょっとシュウさんのこと…知りたいな。
「はぁ…」
ふいに、ため息が溢れる。
私はキッチンに戻って片付けをして。
自分自身も食事を済ませると、部屋の掃除や洗濯などの家事を済ませた。
2時間くらい家事に没頭していたかな。
シュウさんとアンソニーさんは相変わらず書斎に籠ったまま。
打ち合わせはいつ終わるんだろう。
とりあえず、アンソニーさんが帰るまでは暇ね…。
何かしていようかと思ったけれど…
シュウさんのうちはとにかく物が少なくて、生活に必要な最低限しか置いていない。
唯一暇つぶしになりそうなTVは言葉がわからなくて退屈だし…。
本当に…何にもない部屋だよなぁ…とグルリとリビングを見渡して…
はっとひとつ思いつく。