第6章 episode.6 キスなんて
episode.6
キスなんて
(ユリ side)
ぽーっ。
頭の中はまさにそんな感じ。
キッチンに立って、コーヒーを淹れながらぼんやりとしていた。
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昨晩はシュウさんが居なくて、不安だったからか満足に寝れなくて。
夜勤明けで帰ってきた彼に添い寝してもらってようやく眠ることができた。
そして、お昼頃にシュウさんより先に目が覚めて。
身支度を整えて、さぁご飯でも作ろうかなって時に…やってきた人。シュウさんの仕事仲間なのだという、アンソニーさん。
私は英語が話せないとは言っても、一応学校で習う程度ならわかるので…。
アンソニーさんの必死な身振り手振りもあって、なんとなく何が言いたいのかは察しつつ。
こちらもカタコトの単語を繋げただけのような、なけなしの知識から絞り出した英会話で意思疎通を試みていれば…おそらくシュウさんの知り合いってことまでは分かった。
その時に、アンソニーさんが…シュウ、と何回か言った後に、私がまだ理解できていないと思ったのか、シュウイチ!と言い出したことがきっかけで…
知ってしまった。
彼…シュウさんの…名前。
シュウって、名前の一部を切り取った愛称だったんだということも知った。