第5章 episode.5 悪夢に勝てる日は来るのか
見張りの配置に着いて、1人になる。
1人でじっとしている間、頭に浮かんできたことは…何故だろう。ユリのことばかりだった。
今日は少しでも観光や買い物に連れ出してやれてよかった。楽しそうだったな。とか…
今夜は1人にさせてしまうが、大丈夫だろうか…とか。
実際、うちに来てからと言うもの、彼女は自分の力で満足に眠れていない。
俺が一緒にいてやって、安心させてやってようやく眠れている状態だ。
…今夜はちゃんと寝られるだろうか。
うなされていないだろうか。
…一晩中、ずっと心配だった。
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翌朝まで、相変わらず標的は動かず、何も起きず。
ただただ、またタバコをひと箱空けて終わってしまった1日に、ついため息をつきながら。
交代の別の捜査官がやってくると、俺はすぐさまセーフハウスに帰った。
朝日はすっかり昇っているが、もしかしたら寝ているかもしれない時間だったので、そっとうちの中に入る。
足音を立てないよう、廊下を進んでいれば。
トコトコ…と小さな足音がリビングから聞こえてきて。
それから、リビングのドアが開き…
「おかえりなさい」
そう、声をかけてくるユリの姿が…。
ルームウエアで目元を擦りながら眠そうにしているが。
起きたばかりなんだろうか?と思って彼女に近寄る。
「ただいま。もう起きているのか。早いな」
そんな俺の声かけに、ユリは一瞬俺から目線を逸らして気まずそうな表情をして口篭った。
「えっと。あ、そうだシュウさん。お腹空きましたよね。朝ごはん食べますか?何がいいですか?」
…話を逸らされたな。
何を隠している?
俺はじっと目を細めてユリの様子を伺った。
…ん?
俺はそっと、違和感を覚えた彼女の目元に手を伸ばす。
指の腹で、目の下をなぞった。
「…寝ていないだろう」
ギクリ。
…そう、顔に書いてある。
「顔色悪いぞ。クマもできている」
「…少しは寝ましたよ。でも、ホラ。まだ時差がちょっと…」
「嘘をつくな。」