第5章 episode.5 悪夢に勝てる日は来るのか
「…ど、どうですか…」
頬を真っ赤にして、恥ずかしそうに少し俯きながら。
真っ赤なワンピース姿を見せてくるユリ。
鮮やかな赤、というより…少し暗めのワインのような色合いが…可愛らしい雰囲気の彼女を、セクシーに感じさせるスパイスのよう。
「…似合うな。」
今までは、ふわふわとした服装しか見ていないせいか。
こうして体にピタリと張り付くようなラインのワンピースを着せてみたら、意外とウエストがキュッと細い。
結構スタイルいいな。
全体的に、小柄で華奢とは元から思っていたが…
じーっと見つめていたら、彼女が耐えられない、とばかりに試着室のカーテンに隠れてしまう。
半開きのカーテンから、顔だけを覗かせている。
「そんなに見られると恥ずかしいです…」
「ああ…すまん。でも本当。結構似合ってるぞ」
「そ、そうですか…?私、背が低いし…こういう大人っぽい服は似合わないのかな、って思ってたんですけど…」
「そんなことはない。似合うさ」
彼女は覗かせていた顔すら隠すように、シャっとカーテンを完全に閉め切ってしまった。
「やっぱり恥ずかしすぎます…私、こういう服好きですけど…着る自信が…なくて。今まで似合うって言われてきた服とは、まるで真逆だし…」
カーテンの向こうから、弱々しい声が聞こえる。
そう言えば…俺が目に留める前に、すでに気になっていた服だと言っていたな。
本当はこういう服が好みで、着てみたかったんだろうか。それを、元彼氏の好みに合わせて。押さえ込んで。
好みでもない、フリフリの服をこれまで着てきたのか。
…なんだろう。モヤっとしたな…
「何年だ」
「…え?」
俺が唐突に、なんの脈絡もない質問をしたものだから、彼女が素っ頓狂な声を上げる。
「元彼氏と付き合った期間だ。どのくらいだったんだ」
「…え?っと…5年?くらい…ですけど…?」
「5年もか…」
「…えっと…シュウさん…?」