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キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第5章 episode.5  悪夢に勝てる日は来るのか







episode.5
 悪夢に勝てる日は来るのか


(Shuichi side)



即席のデートプランもいいところだな…。
今日の1日の流れを思い出しながら、改めてそう思う。

コーヒーを飲みながら街並みを眺めつつドライブ。
それから、この辺りじゃ少し有名な美術館を見学。
昼食は通り掛かりに見かけた、特別でもなんでもない、何処にでもあるような小さなカフェで過ごして。

そして。

「これから服を買いにいく、で…いいか?」

夜、俺は仕事に出なければならないからな。
時間の都合上…おそらく次の目的地が最後になるだろう。
そう、食事を終えた様子の彼女に伝える。

「はい。十分アメリカ満喫しましたので、満足です」

ニコッとまた…花のように笑う。
全然満喫できていないと思うけれど…
本人がこれで満足ならいいんだが。
でもまぁ、今のところ退屈そうな様子は見てないので…俺に気を遣って言っている訳ではなく、おそらく本心だとは思うが。


「事前にわかっていれば、もう少しなんとかしたんだがな」

思わず、小さく呟く。

「え?」
「いや…なんでもない」

せっかく日本からはるばる来ているって言うのに、これだけではな。
また彼女が滞在中に時間ができたら、どこかへ連れていくか。
…って。何故彼女のために、こんなに考えている?
あくまで行き場もなく困っているひとを助けただけに過ぎない…宿を与えてやってるだけで十分なはず。ここまでしてやる義理はないんだが。

…何故なんだろうな。

なんて思いながら、カフェを後にした。


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