第4章 episode.4 デート?
自分と好みが同じだといいな、なんて…なんでもない相手に言うかしら?
ふと、疑問に思ってしまって。
私はついつい訝しげな表情をしていたらしい。
シュウさんがそれに気がついて、はっと目を見開く。
自分の発した言葉を思い出したように。
「違う」
少し慌てたようにシュウさんは口を開いた。
「深い意味は…なくてだな。ただ。短い間とは言え、一緒に過ごす相手だから。好みとか…似ている方が居心地がいいかと思っただけだ」
彼は、そう言い放った後、そそくさと美術館の入り口の方へ歩いていく。
少し斜め後ろを着いて歩いた。
シュウさんを見上げると、ニット帽に半分隠れた耳が…ちょっと赤くなっていた。
照れてるのか…冬の寒さのせいなのかわからなかったけれど。
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美術館は、壮大で美しい作品で溢れていた。
絵画…彫刻…様々な芸術品。
専門的な知識はなくとも、自分には想像もできないようなアートが目の前に広がっていて。
いつの間にか夢中になって眺めていた。
シュウさんと、ゆっくりと館内を回って。
充実して落ち着いた時間が心地よかった。
ここアメリカに来てから…嫌なことは沢山あったけれど。
素敵な人との出会いに恵まれたし…
日本では中々見られない作品を、こうして拝めたし。
少しずつ、アメリカに来て良かったかも。という前向きな気持ちが増えてきた。
「シュウさん」
隣で私と同じように、壁に展示されている絵画を見つめているシュウさんに声をかける。
「ありがとうございます。素敵な場所に連れてきてくださって」
思わずお礼の気持ちが溢れ出て、素直に伝えたら…
シュウさんは何も言わなかったけれど。
チラリと横に立つ彼を見上げたら、彼も視線に気付いたのかコチラを見て。ふ、と小さく微笑まれた。
広い館内を一周した頃には、あっという間にお昼になっていて。
美術館を出た途端、ぎゅるっと私のお腹が鳴ったので…
昼飯にしよう。と言いながら、彼は私の頭をポン、と撫でた。