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キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第4章 episode.4  デート?






シュウさんはコーヒーを2杯受けって、ひとつを私に手渡してきた。

「熱いから気をつけろ」
「あ、えっ。…あの、お金…」
「いい。いちいち気にするな」
「でも…」

払います、と言おうとしたけど、口を閉じた。
シュウさんが、ジトっと目を細めて嫌そうにしたので。
…そうだ。シュウさんが求めているのは遠慮じゃなくて。

「ありがとうございます」

この言葉。
思った通りだったらしく、彼は満足そうな表情に変わった。
ちゃんと見てれば表情もしっかりあるし。言葉は少ないけど、その分お顔は素直で案外わかりやすい人かも。
なんて思ったりした。



コーヒーを買っただけみたい。
車はコーヒーショップを出て、再び広い道路に出た。

「まだ1時間くらいは走るから。」

そう言いつつ、彼もおそらくブラックなんだろうコーヒーを片手に運転していた。

一連の流れが…なんだかスマートで、気遣いの仕方から何からかっこよくて。
思わずキュウっと音を立てた心を誤魔化すみたいに、いただいたコーヒーに慌てて口をつけた。

「あっつ…!」
「熱いと言ったろ」

うう…だって、シュウさんは平気そうに飲んでるから…

舌がヒリヒリする…

熱々コーヒーが冷めるように、ふうっと何度かカップに息を吹きかけて。
飲める温度になったかなぁ?と恐る恐る口をつけたりしていると。
隣からくくく、と小さな笑い声が…。

何だろう?と横を見ると、運転しながらも何だか楽しそうに笑っていた。

「な、なんです…?」
「いや、小さい口で一生懸命だなと思ってな。」
「えっ…小さい口?」

思わず自分の口元に触れる。
初めて言われた気がする…私って口小さいの?と思わず普通の人がどんなだか気になって、体を少し斜めにして、シュウさんのお顔を覗き込む。
本当に深く考えてなくて、自分のと比べたくて見ただけなんだけど。

「俺は普通だろ」

と言われる。

「わ、わかんないです…そう言われても、比べてみないことには…」



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