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キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第4章 episode.4  デート?




シュウさんの運転する車の窓から、ワシントンの街並みを眺めた。
どこにいくのか知らされず、ただまったりとしたドライブの時間を過ごしていた。
見慣れない外国の街並みを見ているだけでも楽しくて、胸が躍る。


シュウさんは多分、元からぺちゃくちゃお喋りをするタイプではないんだろうな。
街中で、観光名所らしき場所を通り過ぎるたび、その場所の簡単な説明と、「時間がないから立ち寄れなくてすまない。」とその都度言われたけれど。
それ以外の会話は特になく、お互い無言になることも多かったけど…苦ではなくて。
沈黙が苦じゃないなんて、初めてだった。
いつも、誰といても。何か話さなきゃ。何か話さなきゃ。って…今までは必死に会話のネタを探していた気がする。
元彼とすら、そうだった。

こんなことは初めてだな。
シュウさんの、落ち着いていて、大人の余裕をまとった不思議な雰囲気のおかげなのかな。

ハンドルを握る彼を見つめる。
真っ直ぐに前の道を見ている横顔。
…左ハンドルの珍しい車…いや、ここアメリカでは、よくある車なのかな?
なんにせよ、かっこいい車がサマになるなぁ。




__________

「コーヒーは普段からブラックで飲むのか」

ぼんやりシュウさんの横顔を見つめていたら、唐突にそう問われた。

「えっ?」
「うちにはミルクも砂糖もないからな。だから仕方なくブラックを飲んでいるのか?」

ああ…質問したい内容は理解した。
今、なぜそんなことを問われたかはわからないけど。
とりあえず素直に返す。

「えーっと。そうですね。コーヒーの味がより引き立ちますし、ブラックの方が好きですね」
「わかった」


ん?

なんで急にそんな質問?と思って首を傾げていると、車がどこかの敷地に入っていく。
キョロキョロと辺りを見渡していると…
車はぐるりと敷地内の建物の周りを回って、とある場所で止まった。
ウィィン…と音を立てて、シュウさんの座る運転席側の窓が開く。

それから、彼は…何やらカウンターのような場所から顔を出しているお姉さんと話し始めた。
英語なので、何を言っているかは分からないけど。
なんとなく察した。
ドライブスルーだ。


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