第4章 episode.4 デート?
「…仕舞い込まなくてもいいんですか…?」
小さな、聞こえるかわからない声でそう…返した。
彼は少しの間、じっと私を見てから…食事の手を再開させて。
「君次第だな」
どちらとも取れない、曖昧な言葉で返された。
…うーん。
私としては、シュウさんは優しくて、頼りになって…まず人として好きなので。
もしも今後、関わってもいいのなら…これきりにはしたくないけどな。
私次第…か。
うーん。どうしたら、今後も関わってもらえるんだろう。どうすれば…フルネームを教えていただけるくらい、仲良くなれるんだろう。
なんてことを考えていたら…
「早く食べないとあちこち回る時間がなくなるぞ」
ついぼーってしていたみたい。
シュウさんに声をかけられて、ハッと顔を上げる。
慌てて食事の手を進めた。
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結局、シュウさんを思い出の1ページに仕舞い込んだ方がいいかどうなのか…については曖昧でよくわからないまま。
食事を終えたら、シュウさんはベランダに一服をしに行ってから、すぐ戻ってきて。
出かけるぞ。と相変わらずぶっきらぼうに言って来た。
私は慌ててお化粧を整えてから。
シュウさんが待つ玄関に向かう。
…シュウさん、服装が仕事に行く時とあまり変わらないんだな。ここ2〜3日一緒にいるけど、大体似たような格好しているな。
黒いライダースジャケットをメインに、黒いニット帽を被った、全体的に黒っぽい服装。なんて思いながら、家を出る彼に続いた。
家を出て、2人で並んで駐車場まで向かっていたら…
隣のうちから年配の女性がエプロン姿で出てきて。
そしてポストに向かっているのが見えた。
目が合ったので、思わず会釈をしたら、その女性に微笑み返されてしまって。
おまけに…英語で何かを話しかけられた。
「えっ…」
何と言われたのか分からなくて、立ち止まってポカンとしていると…
斜め前を歩いていたシュウさんが、助け舟を出してくれた。
その女性に向かって英語で返事をしてくれていて。
いくつか言葉を交わして話を終わらせると、私を振り返り…
今度は日本語で「行くぞ」と一言。
慌てて着いていく。