第4章 episode.4 デート?
行きたいところかぁ…考えてなかったな。
何処かないかな。何も言わずお任せしてばかりいても相手に申し訳ないよね。何か自分でも出かける前に、調べてみようかな…なんて考えていたら。
「あ」
ひとつだけ…思い浮かんだ。
「どうした?」
「えっと…あの。ひとつだけ、行きたいところが見つかりまして」
「ほう。言ってみろ」
うーん。
シュウさんには退屈させてしまうかもしれないけど…でも。
「えと…ショッピング。服を買いに行きたいです」
「…服?あんな大きな荷物で来ているのに、持って来てないのか?」
いや…そうではなくて。
思わず、自分の服を見下ろした。
…フリフリと可愛らしいデザインのワンピース。
「実は…彼…じゃない。元彼と会うためにコーディネートした服ばかり持って来てまして。…その。勝負服…と言いますか。彼に選んでもらった服とか、買ってもらった服ばかり持って来ていて…」
正直、振られたばかりのこの時に、そんな服を着るのは少し気が滅入る。
でも…そんな服たちしか持って来ていなくて致し方なく着てる…というところなので。
ふと、鏡に映る自分が…元彼の好みの服を着た、着せ替え人形のように感じて…そんな思いを払拭するためには。
服に罪はないけれど…この服たちとはサヨナラすべきと思って。
思いを理解してもらえたのか、シュウさんは納得したような顔をして。
「いいだろう。なんなら俺がフリフリが着いていないセクシーな服を選んでやろうか?」
と、少し落ち込みかけた私を励ますように、冗談を言いつつ笑わせてくれた。
「あはは。そしたらシュウさんに選んでもらった思い出の服になりますね。日本に帰っても忘れられないじゃないですか」
深い意味はなく、話の流れでそう言っただけなんだけど。
シュウさんは意外な反応をした。
「別に忘れなくていいじゃないか。俺をただの海外旅行の思い出の1ページの中に仕舞い込むつもりか?」
そんな、映画のワンシーンみたいなセリフを言われた。
思わず…食事の手が止まる。
てっきり…お名前もおそらくフルネームを教えていただけてないし…連絡先だって簡易的なものしか交換してもらえなかったし。
これきり…に、するつもりなんだと思ってた。
彼の中でも、ただ困ってる人をちょっと助けただけにすぎないのだと思ってたのに…。