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キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第3章 episode.3  やさしい世界





「俺と同じベッドで寝ろと言っている」

「えっ、ええっ!?」

びっくりまん丸と目を見開く彼女を強引に丸め込む。

「いいから。寝てみろ。ほら、ちょっと奥へ動け」

ぐい、と肩を押すと。
彼女は戸惑いがちに布団の中でズリズリとベッドの奥の方へ移動した。

空いた空間に、俺は潜り込む。
トン、と自然と触れる肩と肩が、じんわりと温かくて。きっと彼女もそう感じているだろう。

「何もしないから。騙されたと思ってそのまま目を閉じておけ」
「…えっと…」
「ほら。いいから。そうしたら寝られると思うぞ。多分な」

戸惑いがちに、隣で目を閉じて深呼吸をしたユリに、再び手を伸ばして。
そっと…頭を撫でる。
相変わらず柔らかい髪だな。なんてよそ事を考えていれば。
しばらくしてから、隣からすやすやと寝息が聞こえてきた。

「ほらな」

何を誇らしげに言っているんだか、自分で自分に可笑しくなったが。

予想は的中。
おそらく人の体温に安心するタイプなんだろう。
とは言え…俺も人のことを言ってられないな。
この子の髪を撫でていると、なんだか眠くなる…。

「ふあ…」

思わず欠伸が出てきて。

「おやすみ…」

俺も目を閉じた。



変だな。

俺は結構ショートスリーパーで…なんたって見張りや長時間の任務も多いから。
こんなにぐうすか寝る人間じゃなかったはずなんだがな。

なんでだ?
…まだ、移動や時差の疲れが取れていないのか?なんて思っているうちに、あっという間に夢の中だった。



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