第3章 episode.3 やさしい世界
食事を済ませて、お互いシャワーも済ませ、寝る支度を調える。
洗面所に、見覚えのない化粧品やら歯ブラシやらが増えていて…本当に自分以外の住人が増えたのだな、と急に実感が湧いたりしながら。
俺は今日も仕事の資料を確認したり、仕事の仲間と情報共有の連絡を取り合ったりとしていて。
寝室に行くのは昨夜同様、ユリがベッドに入って1~2時間経過してからだった。
おそらく寝ているだろうと思って、そっと寝室に入ったが。
「うう…うっ、はあっ…」
ユリは…昨夜よりはマシのようだったが、また…うなされていた。
眉根を寄せ、苦しそうにしている。
しっかり寝付いていなかったのだろう。
俺が近付いたことで、気配を察知したのか…パッと目を開けてしまった。
「はっ…はぁっ…」
息を荒げている。
そして、ツウ、と一滴…涙が伝っていた。
「…大丈夫か」
昨夜のように、そっとベッドに腰掛け、彼女を見下ろす。
目の横を伝う涙を指で軽く拭ってやった。
「…はぁ…はい、…わ、私…また…」
「昨日程ではなかったがな。またうなされていたようだ」
起きている間は明るく振る舞っているようだが…やはり心の底では不安は拭いきれないか。
やはり…強いようで弱さもある。
いや、出会ったばかりの俺に、あまり弱った姿を見せてく無くて、起きている間は強がっているだけかもしれないな。
なんにせよ…なんだか放っておけない不思議な子だな…。
そっと…昨夜のように。俺は彼女の頭に手を伸ばした。
キュッと目を閉じて身構える、彼女の髪を優しく撫ぜて。
大丈夫、と落ち着かせるように何度か撫でているうちに…だんだんと彼女の表情が落ち着いてきた。
昨日も結局、頭を撫でてやったらグッスリ寝ていたからな。
おそらく、人肌が恋しいというか。人の体温に落ち着くタイプなんじゃないだろうか。
そう、勝手に俺の中で結論付けて。
だったら…。
「…君、もう…俺と一緒に寝ろ」
「…へっ!?」