• テキストサイズ

キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第2章 episode.2  ポトフ





もうこれ以上、迷惑なんてかけたくないのに…。

それでも、シュウさんから感じられる優しさに気が緩んでしまった…。

視界に映る、少し困ったような表情のシュウさん。

うう…。ごめんなさい…
沢山困らせて…本当に申し訳ない。
でも、溢れてくる涙は止められなくて。

両手で目元を拭う。
涙、お願いだから止まって。
そう思いながら。

すると…鼻を掠める、ふわりと甘い桃の香り。
先程シュウさんから、心を落ちかせるべくつけて頂いたアロマ代わりのそれ。
その香りに、不思議と涙が落ち着いてきて。


「ふぅー…」

ゆっくりと息を整える。

シュウさんの手が、そっと頭上に伸びてくる。

よしよし、と…まるで寝付けない子供にするかのように、何も言わずに頭を撫でられた。

あったか…。
手のひら大きいな。

それから、なんだかめちゃくちゃに心地いい。
なんだこれ、すごい魔力みたいな…

突然、眠気が…

「シュウ…さ…ん」
「ん?」

この、ん?と言う一声すら、落ち着く低い声で。
びっくりするくらいに眠気を誘う。
突然、瞼が重たくなってきた。

「ありがと…ございま…す…」

とにかく、今日のお礼。
こんな初対面で見ず知らずの私を助けてくれた、救世主でお兄ちゃんみたいなシュウさん。
本当に感謝しています。

そんな気持ちを込めて、呟くように言ったお礼の言葉を最後に…


私はようやく眠りについた。




/ 98ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp