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キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第2章 episode.2  ポトフ




…う〜ん…お世話になりっぱなしの上、先に寝させてもらうのは申し訳ない…けど。


「い、いいんですか…」

正直、とっても疲れていることは確かだったので。
一旦…休みたい…かも。


「ああ。寝室を使っていいから。ゆっくり休みなさい」

なんて。
ちょっとぶっきらぼうな命令口調なんだけど。
まるで頼れる兄ができたみたいでとても安心するのはなぜだろう…この独特の低い声なのか。
この人の余裕をまとった雰囲気からなのか。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「ああ。寝室に案内する。」

至れり尽くせり…。
寝室は…おそらく彼の部屋なんだろう。
広いダブルベッド。これもアメリカだから…?
なんて思いながら、男性らしいシックで落ち着いた雰囲気の部屋に案内された。

歯を磨いて、寝る支度をして。
そっと。ベッドに潜りこむ。

ソワソワ。
出会ったばかりの男性のベッド…何だか緊張するな。


…って。

あれ?

「…シュウさんはどこで寝るんだろう…?」

もしかして。
他にベッド…なんてあるワケないよね?
だって…さっき、独り身って言っていた筈だし。


ガバッと私は体を起こした。

「だめだめだめ…」

そんな。
もしもソファとか床とか適当な場所で寝るなんて話だったらそんなの耐えられない…
申し訳なさすぎて耐えられるはずがない…

慌てて寝室を出て、リビングに向かう。

うっすらと間接照明の明かりがついているから…おそらくまだ起きているはず!と、乗り込んだ。


「あ、あのっ…シュウさんっ」

ガチャリと扉を開けると同時にそう声を上げれば…
思った通り。横にはなっていないものの、ソファでくつろいでいる様子のシュウさんがいた。
そのまま寝るつもりだったんじゃないだろうか…

私の声に気がついて、ん?と振り向く彼に向かって、少し小走りになりながら近付く。

「シュウさん、もしかしてこのソファで寝るつもりじゃっ…」

少し目をぱちくりと瞬かせてから、彼は頷いて。

「そうだが…どうした?」

やっぱり…!


「ダメです!申し訳なさすぎて寝れません!」
「…いや、だが…」
「お願いです!私がソファで寝ますから!」



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