第2章 episode.2 ポトフ
「日本人は遠慮が多すぎる。もっと頼っていい。とりあえず迷惑とかは置いておいて。そんなものは明日また考えたらいい。今日はとことん甘えて、休んで。迷惑かけてばかりでは気が済まないというのなら明日から俺にメシでも作ってくれ。それくらいでいい。わかったか」
シュウさんは、一息にそう言った。
…うん。本当凄くいい人みたい。
強引だけど…私の気持ちをとても考えてくれている言葉。
なんでもしてもらってばかりでは困る、という私に対して、何もしなくていいと言うわけではなく…敢えて、これをしてほしいと言って恩を返す機会を与えることで、私を逆に安心させている。
大人だな…思いやりかたが上手な人だな。
「ありがとうございます」
思わず私はペコリと頭を下げた。
「いや、いい。それよりほら、座れ」
彼は強引に私の背を押して、ダイニングの椅子に腰掛けさせた。
4人がけのダイニング…
広いテーブル。
あ、そういえば…
「あ、あの…シュウさん」
「ん?」
キッチンに向かっていく彼に声をかける。
シュウさんは振り返らずにキッチンで何か作業をしながらカウンター越しに返事を返した。
「あの…置いてもらえるのはありがたいんですけど…。ご家族とか…あの、その…か、彼女さんとか…」
もし、いるのなら…そっちの意味でご迷惑にならないだろうかと思って一応確認したかった。
……彼からしたら、私なんて小娘だろうけど。
一応、異性だし。
一人暮らしにしては広い部屋だし、なにより家具が大きくて1人用に準備された住まいには…見えなくて。
「ああ。そんなものはいないよ。独り身だ。安心しろ」
「えっ…あ、そうですか。…なんか、テーブルも4人掛けだし…一人暮らしのお家に見えなくて…」
彼はフッと笑って。
「アメリカだからかな」
と言う。
「アメリカではこれくらいが普通だよ。なんでも大きい。そんなもんだと思っておいてくれ。あと、ここは…日本で言う社宅、みたいなものだから。俺が用意したわけじゃない。」
へー…。
海外って…すごいなあ。
まあ、家族や恋人など、誤解されたら困るような相手がいないなら、取り敢えず良かった。