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キューピッドはスーツケース【赤井秀一】

第2章 episode.2  ポトフ






とにかく今日は休ませてもらおう。

「…シャワー、ありがたくお借りしたいです」

「ああ。案内しよう」

彼は、テーブルにマグカップを置いてから私をシャワールームに導いた。

ついでに行く途中、キッチンやトイレなど生活に必要な場所を簡単に説明されて。


それから、入ってはならないと言われた書斎のドアも案内された。

そもそも、ドアに鍵がかかっていたので入れそうにはなかった。
まあ、勝手に入るつもりは毛頭ないんだけど。




__________


「で、ここを押すとシャワーの水圧が変わる。それから…」

シャワールームについても丁寧に教えてくれた。
…コワモテなお顔に似合わず案外丁寧で、世話焼きだなぁ。なんて、何となく思いながら。

「あとは大丈夫か?タオルはここだからな」
「あ…はい。大丈夫です。ありがとうございます。」

日本のようにバスタブにお湯を張ってゆっくり浸かって…なんて風習はないみたい。
私はササッとシャワーを浴びて、日本から持参していた部屋着に着替えるとリビングに戻った。


…シュウさんは、ソファに深く腰掛け、膝にパソコンを置いて、何やらカタカタと打ち込んでいた。


「…あの、シャワー…ありがとうございました」

そっと声をかけると彼は視線だけをこちらに向けて。

「少しはスッキリしたか」

と言った。

それは…シャワーを浴びて一日疲れた身体が…という意味なのか、それとも…少しは心はスッキリしたか?と言う意味なのか…

よくわからなかったけど。
とりあえず私は頷いて返した。

「…そうか。食事は?何か軽く食べるか?」

…うん。
見かけによらず本当、いい人だな。

ぶっきらぼうな口調だけど、優しい。
こんなお兄ちゃんがいたらいいだろうなぁ、と思うほど。


「えっと…。少しお腹空いてますけど…そんなご迷惑は…」


「先程から。君は…」

彼は、ふう、と呆れたような声を出した。




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