【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
「っ!!先輩、先輩!今何しようとしました!?」
背伸びをして、一所懸命窓から顔を出して、図書室の中に居る梅宮に声をかけた。
「…いや…蒸し返さないで……。」
それでも背を向けたままの梅宮に、いつきは眉間に皺を寄せる。
「先輩!こっち向いて!」
いつきだけの時間は作れないと言ったくせに、こうしていつきを待っていて。
キスをしてくる男が今どんな顔をしているのか確かめたかった。
俯いていた頭が上がると、ゆっくり梅宮はいつきの方を向いた。
目に映った梅宮は、自分と同じ様に顔を紅潮させていて、恥ずかしそうに…、それでも真っ直ぐ自分を見てくる。
きっと自分も同じ顔をしているだろうと分かって、いつきはサッシを掴んでいる手に顔を埋めた。
「……先輩…好きです…。」
「………うん……。」
「…はぁ……先輩は私より弱くて卑怯です。私から逃げてばっかりで向き合う時はいつも先輩の都合です…。」
「……本当にどうしようもない奴だね…。」
本当にどうしようもない人だ。
いつも気持ちをぶつけるのは自分だけで、その度にこの心は疲弊していく。
「……先輩が卒業したら、とても心穏やかに中学生活を過ごせそうです。」
でも、その穏やかな時間と引き換えに、梅宮に会えない時間が、どんどん彼を求める時間になるとも分かっている。
「……そんな事言わないでよ……。」
悲しそうに聞こえる梅宮の声ですら、もう穏やかに聞けない。
こんな事で梅宮が傷付いたと言うなら、なんて身勝手なのだろうと強く憎んでしまう。
どうしようも無く大好きで。
答えてくれない梅宮が、どうしよう無く憎かった。
もう純粋に好きだと思っていた時期はとうに過ぎていた。