【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
いつきは梅宮の隣の椅子に置いてある紙袋の中のチョコを見た。
もし自分が渡したとしてあの中に一緒に入ってしまうなら、これほど気分が悪いものは無かった。
「私は毎年友チョコだけで、もう全部友達と交換しちゃいましたよ。」
ジトッとチョコの袋を睨みながら、いつきは言った。
「……まぁ別に、女の子からあげるモノって決まって無いしね…。」
「え?」
チョコを貰えないと分かって、落ち込んでいた梅宮が、何かを思い付いた様に顔を上げた。
梅宮の言葉の意味が分からなくて、いつきは梅宮を見た。
目が合って、ゆっくりと梅宮の手が伸びて来たのが分かった。
まるで金縛りにあった様に、いつきは梅宮の目から視線を外す事が出来なくて、伸ばされた手がいつきの頬に触れた。
次の瞬間に梅宮の顔が近付いてきたとが分かっても、頭が追い付かずに、その光景を呆然と見ていた。
「っいたっ…。」
……くは無かった。
思わず口に出てしまったのは、近付いてきた梅宮のメガネがいつきの鼻に当たったからだ。
「…………なるほど……メガネは邪魔なのか……。」
顔を歪めた梅宮がそう言って、いつきから顔を離した。
「……………………。」
今一体…何が起きた?
窓から体を出していた梅宮は、そのまま図書室に戻ってしまった。
梅宮の背中を見ながら、いつきは段々と頭の中が整理出来てきた。
(今、先輩キスしようとしなかった?)
その状況が理解出来ると、いつきの顔は一気に真っ赤になった。
後ろから見える梅宮の耳裏と首筋も、同じ様に真っ赤になっているのが分かる。