【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
父親の顔が歪んだのは、いつきの顔が赤く腫れていたからだ。
瞼や鼻の頭が真っ赤になっていた。
寒かったからと、そう片付けるには潤んだ目がそうじゃ無いと教えてくれる。
「…条は来ないから…2人で行こう。」
いつきはニッコリ笑って父親に言った。
それが、どんな意味を含めているのか、父親は想像するしか出来なかった。
だけど、いつきが泣きそうな顔で笑うから、それ以上何も言えなかった。
その日から十亀が店に来ない理由を、父親は2人には何も聞かなかった。
2月14日
世間はバレンタインで浮かれているが、いつきはその浮かれた時間を味わう事は出来なかった。
アレからずっと姿を見せない十亀もそうだけど、特段梅宮に特別に何かをする気も無かった。
『どうせ、他の人から沢山貰ってるだろうから。』
義理チョコの1つ増やした所で『他のみんな』に埋もれるだけだと分かっている。
いつきは芽が生えてきたチューリップに水をやりながら、周りが浮かれているのを冷めた目で見ていた。
(朝から何人、梅宮先輩にチョコを渡したと聞いたか……。)
いつきは段々イライラしながら、ホースの水を止めた。
「いつき。」
自分を呼ぶ声が聞こえて、いつきは顰めっ面で顔を上げた。
声を掛けるのが遅すぎる。
自分を呼んだ梅宮に、いつきは反射的に思った気持ちだ。
「?!」
図書室の窓から、顔を出して笑顔でいつきを呼ぶ梅宮に、いつきは一瞬で、先程までの苛立ちを消される。
「はぁぁぁ……何ですか先輩、そのメガネ姿っっ!」