【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
十亀は歩いている足を止めると、ポロポロと涙が出た。
今まで、いつきの側で当たり前の様に過ごして来た日々がもう戻らない。
いつきを諦めると言う事は、十亀にとって全てを捨てると言う事と一緒だった。
十亀はいつきの母親や父親も好きだった。
自分の母親や父親と一緒に過ごすいつきも好きだった。
夏祭りでいつも屋台が隣になるおばちゃん。
飲屋街の飲み屋のおじさん達。
クリスマスに手を繋いで歩いていれば、あっという間に噂になる小さな町。
全部全部大好きで、いつもその中心にはいつきが居た。
無理矢理キスをしたからいつきに嫌われたのか。
変な情欲でいつきを汚してきた罰なのか。
どんなに後悔しても、理由は十亀では無かった。
『梅宮一を好きになった。』
ただそれだけだった。
十亀は振られる理由が自分に無いことが悲しかった。
自分がどんなにいつきを想っても、いつきが梅宮を好きなだけで、全部ひっくり返される。
こんな虚しい事があるだろうか。
せめて、無理矢理キスしたから嫌われた。
汚い欲望を押し付けられたから嫌だった。
そんな風に、1つでも自分に原因があったのなら、こんなに悔し涙も出なかっただろう。
いつきを諦めると言う事は、自分の体を裂かれる様な痛みだった。
これからどうやって過ごしていけばいいか分からないくて、足が前に進まないほどだった。
「亀ちゃーん!!!」
十亀が両手で顔を覆って立っていると、兎耳山の声がした。
「あけおめー!!亀ちゃん何してたの?!初詣行った?!これからオリ行かない?!」
「…………………。」