【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
「私はもう、条を幼馴染だとは思って無いよ。
私を好きになってくれてありがとう。」
いつきが目を逸らさずに真っ直ぐ十亀を見て言った。
目を逸らしたくなったのは、十亀の方だった。
「私は条に好きと言われても、梅宮先輩を忘れる事は出来ない。
梅宮先輩が私の好きな人なの。」
そうハッキリ言い切ったいつきに、十亀を顔を俯かせた。
「……梅宮は誰も好きにならないよ。」
「そうかもしれないけど、私の気持ちが離れる事は無いよ。」
このまま片思いで終わっても、自分の気持ちが消えるまで好きでい続けようと決めた。
幼馴染で。
いつも側に居る十亀を好きだと思った事もある。
だけど、梅宮に会ったら一瞬で世界が変わる。
何度諦めようとしても、結局何度でも好きになって、気持ちが変わる事なんてなかった。
「……………。」
十亀はゆっくりといつきが言った言葉を噛み締めた。
『分かったよ、諦める。』
しかし、どんなに口を開こうと、その言葉は出てこなかった。
暖かい春の、陽だまりのような毎日だった。
いつきと過ごす日々はどれも楽しくて、一緒に居るだけで幸せと感じられる様な。
そんな毎日だった。
居る事が当たり前だと思った事なんて無い。
だから十亀は毎日会いに行った。
一緒に居たかったから、いつも側にいた。
愛していたから、同じ様にいつきに愛して貰いたかった。
だけど、それは十亀の一方通行の思いで、彼女はその気持ちを他の男に寄せていた。
「じゃあ、もう今までみたいには出来ないねぇ…。」
十亀がそう言うと、いつきは目を顰めた。
それが何を意味するか知っている。