【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
明らからに十亀の機嫌が悪くなっている。
「……………。」
理由は分かっているので、いつきはそれには触れずに、おみくじを結ぶ為におみくじかけに向かった。
いつきの目線の高さは、すでに結ばれたおみくじがひしめき合っていた。
十亀はいつきからおみくじを取ると、更に上の空いているスペースにおみくじを結んだ。
綺麗に自分のおみくじを結ぶ十亀の横顔を見て、いつきはまた顔を逸らした。
そのいつきの仕草が目の端に映り、十亀は分かった。
どうやら今日、いつきは十亀にとってよくない事を言ってくる様だ。
「……行こうか…。」
おみくじを結び終わると、十亀はいつきに声を掛ける。
神社に来たよりもゆっくりと2人は帰り道を歩いた。
「………………。」
よほど言いづらい事なのだろう。
中々いつきが話しかけて来ないから、それだけでいつきが何を言いたいのか想像が付いた。
十亀から話を切り出す事だって出来る。
だけどそれじゃあ余りにも腹の虫が収まらない。
ずっといつきに気持ちを伝え続けてきたんだ。
その答えはちゃんといつきの口から聞きたかった。
「……条……。」
ボソッといつきの声が聞こえた時に、十亀の肩が跳ねた。
覚悟していたのに、実際にいつきが話し出そうとしたら、途端に気持ちがそれを拒否する。
「……聞きたくない…。」
そう言った十亀の顔を、いつきはやっと見上げた。
目を顰めていて、唇を噛み締めている。
眉間に皺を寄せて目を伏せている十亀の顔を見て、これから自分が何を言おうとしているか、十亀が知っていると分かった。