【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
『花壇を上手く使えば、育てられる野菜苗はあるかもしれません…。』
いつきがそう言うと、一瞬で暗かった表情が明るくなった。
『本当?!俺に教えてくれる?!』
その時の梅宮の顔は今でも覚えている。
そう言って期待に満ちた顔でいつきに笑顔を向ける梅宮に、いつきはすぐに心を奪われた。
梅宮はゆっくりいつきに近付いて来て、いつきの前に腰を下ろした。
目の前に蒼い目が向けられた。
『俺、梅宮一。君の名前は?』
そう聞かれて高鳴った鼓動を悟られ無い様に、いつきは梅宮からが顔を逸らした。
『前橋いつきです……。』
『いつきね、いつきちゃん?』
ちゃん付で呼ばれて、いつきの顔が赤くなった。
自分の名前を呼ぶのは、身近では十亀しか居なくて、その十亀ですら『ちゃん』とは呼ばない。
言われないない名称に戸惑って、いつきは咄嗟に言った。
『……… いつきでいいです…。』
そう言ったいつきに、梅宮の表情が一瞬固まった。
いつきは自分が言った言葉に後悔しそうになるが、すぐに梅宮は笑顔を作った。
『じゃあいつき。』
そう言って、満遍の笑顔を見せた梅宮を、多分一生忘れないと思った。
それが、梅宮一との出会いで。
いつきにとっては初恋の瞬間だった。
いつきは初めて知った胸の鼓動に、いつまでもその笑顔を見ていた。