【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
最後まで突き放してくれたら良かったのに。
そうだったら、今日梅宮一への気持ちは終わったかもしれない。
帰りの道でいつきはやっぱり涙が流れた。
梅宮の中途半端な優しさに苛立つ気持ちと。
それでもやっぱり、それすらも嬉しくなってしまう気持ち。
どちらも本当で、梅宮を試す様に縋り付いては、彼の答えだけが全てで、いちいちその言葉に振り回されてしまう自分が惨めで仕方ない。
(ああ…苦しいのに、彼が与えるこの苦しさすら、もう先輩だけしか見えなくなる。)
『会いたくなる』と、梅宮は簡単に言った。
『会いたい』と。
その言葉をいつきが伝えるのに、どの位時間がかかったか、まるで知らない。
梅宮の自分への好意は確かにあるのは分かる。
だけどそれは自分の気持ちとは遥かに違う。
その現実が涙を流させている。
いつきは涙を拭うと、大きく息を吐き、真っ直ぐ前を見た。
それでも、もう彼を好きだと知らなかった事には戻れない。
そう分かっているから、結局は梅宮に縋り付くしかないのだ。
1月3日ー。
『条っ…もう辞めて……。』
最近は抱き締めてキスをすると、いつきは真っ赤な顔で嫌がる。
目にいっぱい涙を溜めながら、顔を歪めて自分を見上げるいつきに、いつもゾクリと背中に電気が走った。
「………………。」
目を覚まして、十亀はスマホを確認した。
今日はいつきと初詣の約束をしている。
約束の時間までまだあった。