【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
「…はぁ…嘘です…。少しの時間でもいいから会って下さい。」
いつきがそう言うと、梅宮の顔はいつきと同じ様に歪んだ。
我慢していた涙は、言葉で気持ちを伝えたら、止まらなかった。
「先輩と会えなくなる方が悲しいです。」
涙が頬に流れて冷たい風に当たると痛い位だった。
寒いからなのか、涙と一緒に鼻水まで出てしまいそうだ。
いつきはコートの袖で、涙を拭った。
「?!」
泣いている顔を隠しているいつきを、梅宮が抱きしめた。
少し人通りから離れたと言っても、周りには人がいて、チラチラと2人を見ていた。
「……………。」
「…先輩…。」
梅宮のその行動にびっくりして、思わす涙が止まった。
いつきは戸惑って、梅宮の名前を呼ぶ。
「……俺は…、いつきが思うような時間は作ってあげられない。」
ボソッと言った梅宮の言葉に、少しドキドキしていた気持ちもすぐに無くなった。
梅宮がまだ抱き締めている腕を離さないから、いつきもそのまま梅宮の行動を待った。
初めて好きな人に抱かれているのに、嬉しい気持ちと悲しい気持ちがせめぎ合った。
『じゃあこんな事しないで下さい。』
そう言えたらいいのに。
そうして突き放す事も出来なくて、いつきは大人しく梅宮の腕の中にいた。
「……俺…まだやりたい事の最中で…その為には風鈴行ってそこで終わりじゃない。
そこからももっと仲間集めて、この街をよくしたいんだ。」
だから他の事を考える余裕なんてない。
そう自分で分かっているのに、何故いつきを抱き締めたのか。
自分でも分からない。