【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第4章 ®️独り占め出来ない
(先輩の私服ヤバいです……。)
いつきを見つけて微笑む梅宮の顔を見ながら、いつきはそんな事を思った。
普段の制服も良いが、こうしてプライベートで会う私服はまた違う。
「あけましておめでとう。」
「おめでとうございます。」
2人は簡単な挨拶をして、そのまま参列者の1番後ろに並んだ。
きっと今が1番忙しいだろうに、抜けて大丈夫なのだろうか。
いつきはそのまま思った事を、梅宮に聞いた。
「中学生をこの時間まで手伝わせる事自体、よくないからね。」
困った様に梅宮は言った。
確かに、その通りだろう。
いつきも十亀も、夜は目立って店の手伝いはしないのだから。
「じゃあ、少しは時間大丈夫ですか?」
「…裏方の手伝いがあらかた終わったら、俺も帰るよ。」
つい、私服の梅宮にテンションが高くなったのか、欲を出してしまった。
そのいつきの欲は、優しい声で簡単に断られる。
それに傷付かないと言ったら嘘になるが、それでもこうして横に並んでいるだけで、十分嬉しかった。
少しづつ列が進んでいくのを確認しながら、2人はずっと話していた。
おかげで並んでいる時間すら、いつきは幸せだった。
「梅宮先輩はやっぱり風鈴高校ですか?」
「うん。ずっと決めていたからね。」
梅宮が風鈴高校に行くと聞いて、そこでいつきは少し悲しくなった。
男子校の為、いつきは行く事が出来ない。
本当に春になればお別れなんだと、急に実感が沸いた。
「……じゃあ、今日はしっかりお願いしなきゃですね。」
「はは、いつきは自分の事お願いしなよ。」
「………………。」
1番寂しいのは。
こうして梅宮に気持ちをかわされる事だ。