【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
「……どこ行くの?条?」
突然十亀に連れ出されたけど、この寒い中、十亀が何処に行きたいのか気になった。
十亀がいつきを見ると、寒そうに両手を重ねて息をかけていた。
その様子を見て、十亀の目が細くなるとそのいつきの手を取った。
十亀に手を掴まれて、大きな手がいつきの右手を握った。
「いつものクリスマスツリー見に行こうかぁ。」
そう笑って、十亀はいつきの手をしっかりと握る。
そしてそのまま2人で飲屋街を歩いて行った。
思えば、こうして十亀と手を繋いで外を歩くのはいつぶりだろうか。
幼馴染と言っても、普通に思春期はあったし、小さい頃当たり前の様に繋いでいた手は、大きくなるにつれ離れていった。
久しぶりに握られた十亀の手は、見た目よりも大きくて…。
温かった。
いつきは繋がれている手を見て、そのまま目線を十亀の顔に移動する。
随分と首を上げないと十亀の顔を見れなくなった。
その横顔は、いつも見てきた面影もあるが、やっぱりもう今まで知っている十亀とは違って見える。
「……条……髪の毛伸びたね……。」
少し襟足が伸びた十亀の髪を見て、いつきが言った。
「うーん……切るのも面倒くさいしぃ…。」
十亀は昔より面倒くさがり屋になった様だ。
無造作の十亀の癖っ毛がそれを教えてくれる。
こうして一緒に歩く十亀は、普通に見たらとても格好いいのだろう。
いつきで無くても、十亀に言い寄ってくる女の子は多そうだ。
前に十亀が他の女の子と歩いていると聞いた事がある。
今もし、また同じ事を聞いたら、もうあの時の様に何も感じないことは無いだろう。