【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
十亀が家に居るから、早く水やりを終わらせよう。
いつきはそんな気持ちで、ホースを持って花壇に向かった。
手に持っていたホースから勢いよく水が出て、いつきは綺麗に咲いている春の花に水を与えていた。
「いつき。」
土曜日の学校なんて、居るのは体育会系の部員だけだった。
いつきはグランドから聞こえる野球とサッカー部の掛け声の中で、自分の名前を呼ぶ声の方を見た。
そこには、そのどの部活にも属さない、帰宅部の梅宮一がニコニコと苗を持って近寄って来る。
「……梅宮先輩…。」
梅宮一は、この学校で有名だった。
白髪の髪とその長身。
そして一際目立つ顔立ちに加えて……。
彼の悪名なのか、武勇伝なのか分からない情報までくっついてくる男だった。
「野菜の苗持って来たから、花壇使っていい?」
そう言って、野菜の苗を見せる梅宮の手元を見て、いつきは少し困った顔をした。
梅宮が持って来た苗は、所謂夏野菜の苗で。
とてもじゃないけど、花壇では育ちきらない苗ばかりだった。
「……梅宮先輩……、その量は畑が必要です……。」
猫の額はどの花壇ではきっと、梅宮が思う様な収穫は出来ないだろう。
「えー?そうなの?でも買ってきちゃったし。」
梅宮は困った様に頭を掻くと自分が買って来た苗達を見る。
その中で、いつきは2つの苗を手に取った。
「これはミニトマトの苗なので、この2つなら花壇でも植えられますね。」
本当はミニトマトでも畝が必要だが、空いている花壇の大きさを考えて、この2つの苗が限界だろう。