【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
「………誰?」
これから出てくる名前がいつきの好きな男で、クリスマスに自分の前にその男と会っていた。
「………梅宮先輩。」
ゆっくりと、いつきは十亀の目を見ながら答えた。
梅宮一。
高架を超えて、こちらにもその名前は聞こえてくる。
兎耳山が今最も気になっている男で、十亀ももちろん、梅宮の事はよく知っていた。
とても面倒見の良い男で、彼を慕っている人間が自然に集まり、かなり勢力も付いていたと聞いている。
そんな男がいつきの好きな男だった。
梅宮の逸話はどれも出来過ぎていて、十亀にとってはリアルに感じなかったけど、改めていつきから梅宮の名前を聞くと、噂通りの男なんだろうと、十亀は思った。
だからだろうか。
いつきが梅宮を好きだと分かって、十亀は安心した。
十亀が知る限り、梅宮はいつきを好きにはならないだろう。
梅宮一はそういう男だ。
今は誰か特定の女を作るより、彼にはもっとやるべき事があり、それを優先する。
その事はどうやらいつきもよく分かっている様だ。
それでもいつきが好きな男は自分じゃ無いという現実に、胸を痛めないわけが無い。
(もう梅宮を好きだと隠そうともしないんだなぁ…。)
いつきの表情で十亀はそう分かった。
ならいつきはどこに向かっていくのだろうか。
いつきに触れてその気持ちを確かめたい。
十亀は近くに居るいつきの父親を見て、さすがにここでいつきに触れる事は出来ないと思った。
「いつき、少し外に行こう…。」