【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
ブツブツ文句を言いながら、それでも十亀は腰を浮かせて店の方に向かった。
その後、父親と十亀が戻って来て、やっとクリスマスパーティーが出来た。
一通り、夕飯を食べて、たわいの無い話をした。
オレンジ色のスカジャンは相変わらずこの家に不釣り合いにあるのに、今日はそんな事気にしないで沢山話せたと思う。
いつきの父親もお酒が進んで、最後の方は酔っていた様だ。
父親が酔う姿はよく見ていたので、いつきはたいして気にしないでケーキを冷蔵庫から取り出した。
切り分けてテーブルに持って行くと、そのケースを見て父親が呟いた。
「何でわざわざ商店街のケーキを買ったんだ?」
その父親の言葉に、ケーキのお皿を持ったいつきの手が、ピクリと動いた。
十亀は、その一瞬のいつきの動揺を見逃さなかった。
「………………。」
商店街にわざわざ?
そこはいつきの中学があり、いわば十亀が唯一入れないいつきのテリトリーだった。
「…学校の先輩にクリスマスケーキの引換券を貰ったの。」
「学校の先輩?」
濁す様に言ったいつきの言葉に、十亀の目が細くなった。
質問したとうの父親がすでに興味を無くしていても、十亀はジッといつきを見ていた。
その十亀の目線に気が付いていたから、急にいつきは息苦しくなった。
梅宮と交換したLINEに、急に罪悪感を覚えたのだ。
「… いつき、どんな先輩?」
父親はすでにその会話は聞いていなく、酔いながら目が虚になりながらテレビを見ている。
いつきと十亀だけが静かに向き合った。