【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
きっと梅宮のスマホの連絡先は沢山の人が登録されているだろう。
彼の連絡先を知った事は、そこまで特別な事じゃ無い。
それは分かっているのに、やっぱり顔が緩んだ。
「……わぁ…嬉しいなぁ。」
梅宮のアイコンを見ながら、いつきの目が嬉しそうに細くなった。
そのいつきの表情を見て、梅宮は少し眉を下げてそれでも笑顔は崩さなかった。
「連絡していいですか?」
「いいから教えたんだよ。」
顔を上げて笑って聞くいつきに、梅宮も笑顔で応えた。
「……じゃあ、もう戻るね…。」
「はい…ケーキありがとうございました。」
梅宮はそう言うと、すぐにお店に戻って行った。
その背後姿をしばらく見て、いつきはゆっくり歩き出した。
やっと、この恋心に答えが下りそうだ。
それはどうやら、笑顔にならないモノと分かっていても、梅宮を好きになって良かった。
最後はそう心からそう思えるだろうと、いつきは人で賑わっている商店街を歩いて帰った。
「ただいまー。ケーキ買って来たよ。」
「お帰り、もう条が居るぞ。」
クリスマスに条が家にいるのはどの位ぶりだろう。
子供の頃に何度かあった位で、毎年の行事なわけでは無い。
だけど、久しぶりに家族の時間に現れた十亀を、いつきの父親もまた普通に迎えていた。
「……わぁ…チキン買って来たの?」
「いつきの家、ケーキ位しかクリスマスぽいの無いもんねぇ。」
母親が入院してから、めっきりそう言う雰囲気の料理は出なくなった。
十亀なりに気を使ってくれた事が嬉しかった。