【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
「…お金払います…。」
梅宮の手を払って、いつきは財布を前に出した。
そのいつきの行動に梅宮の顔が一瞬曇った。
「…クリスマスプレゼントは他に下さい。」
いつきは財布からお金を出して梅宮に差し出す。
いつだって梅宮から欲しいのは、他の人と一緒の感情じゃ無い。
真っ直ぐに自分を見てくるいつきに、梅宮は同じ様にいつきを見返した。
「私、先輩の時間が欲しいです。」
梅宮の手にお金を置くと、いつきはそう言った。
「他の人と同じ時間は嫌です。
私の為だけに時間を下さい。1時間でもいいです。」
梅宮がお金を握ったのを見て、いつきは目を伏せた。
「先輩……初詣……私と行きませんか?」
普段は絶対会えない冬休み。
その時間に梅宮との時間が欲しかった。
だって貴方は来年の4月には卒業してしまう。
それまでの時間を、その他の後輩と一緒に扱われるのは嫌だった。
自分を見返す梅宮の顔を見て、彼が自分の気持ちに気がついていると分かった。
梅宮は表情を変えずに、無表情で、その顔からはいつきの言葉に対して喜びも動揺も無かった。
こんな風に自分の気持ちを無視されて、他の後輩と一緒に扱われるのはもう嫌だった。
それが失恋の道だとしても、もう自分の気持ちを誤魔化して、皆んなの梅宮を見ているのも耐えられない。
欲しいのは、いつきの気持ちを知って、それでも応えてくれる梅宮の気持ちだ。
「……初詣……いいね…。」
梅宮はいつきから渡されたお金を握った。
受け取った梅宮の行動の意味は分かっている。