【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
クリスマスでもいつでも『あいつら』の梅宮に、いつきは不謹慎にも喜んでしまう。
でも、このケーキは、何故こんな風に渡されたのだろう。
こんな些細な特別扱いに、簡単に舞い上がる自分が嫌になる。
「…ありがとうございます。お金払いますね…。」
いつきは財布を鞄から出すと、その手を梅宮が止めた。
「それはいつきへのクリスマスプレゼントだから。」
そう笑顔で言う梅宮に、いつきの胸が痛んだ。
梅宮からの初めてのクリスマスプレゼントを食べれそうも無い。
「……何でプレゼントなんてくれるんですか?」
嬉しい気持ちの中に、梅宮の心情を考えてしまって苦しい自分が居る。
大勢の中の1人に、梅宮は何度プレゼントを渡しているのだろう。
「…最近、なんか辛そうな顔してたから。」
梅宮がそう言うと、いつきは驚いて顔を上げた。
最近、梅宮と話なんてしていなかった。
いつも自分が梅宮を見つけてそっと見ている日々で、梅宮も同じ様に自分を見ていたのだろうか。
きっとその頻度はいつきの半分以下で、たまたま見かけたいつきに対してそんな印象を持ったのかもしれない。
だけど、いつきの胸が高鳴り、期待するには十分な言葉だった。
(この人は私の気持ちを知っているのかもしれない。)
そんな予感と、知っていてもその気持ちを無視されている現実がとても辛くなった。
このまま見ているだけで終わっても良いと思っていた恋心だった。
だけど、そんな風に簡単にかわされてしまうなら、それはとても許せるものじゃ無かった。