【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
だから、いくらこうして梅宮を見ても、目が合わないのも分かる。
いつも側に居る梅宮に気付くのは自分だった。
不思議だ。
こうして見れる日があるだけで幸せだと思えた時はとっくに過ぎていた。
その切なさを教えてくれたのは、十亀だった。
今はその事実だけに胸が痛む。
25日の夜は、少しだけ早く店を閉める。
でも電話が鳴れば取ってしまうのがいつきの父親だ。
それでも、店も落ち着いてきて、いつきは商店街にクリスマスケーキを取りに行く。
「今年はいつものケーキ屋じゃないのか?」
「うん、商店街で予約してみた。」
不思議がっている父親の顔を横目に、いつきは商店街に向かった。
飲屋街もクリスマス仕様になっているが、商店街の方も負けずに至る所にクリスマスの模様しがされている。
商店街に流れる音楽までもクリスマスソングになっていて、その賑わいに胸が弾んだ。
商店街でチラホラと梅宮の仲間が見えたけど、梅宮本人を見つける事は出来なかった。
……少し会いたかったな…。
何か特別なことを期待していた訳ではないが、せっかくなので少しだけでも会いたかった。
少し寂しくなったけど、せっかく梅宮から貰った引換券を手に、いつきは目的の洋菓子店屋に向かった。
店の外に少しの行列があって、サンタさんに扮した従業員らしき人が、引換券とお金と交換にクリスマスケーキを渡している。
いつきはその列の最後尾に並んだ。
とても元気な声で、笑顔でクリスマスケーキを渡していくサンタさんを見ながら、いつきはボーッと見ていた。