【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
また抱き締められてキスをされるかと思った。
「…………。」
「……そんな顔しないでよぉ…。」
いつきが息を呑んで、十亀の動向を伺っていると、十亀は少し悲しそうに目を伏せて言った。
その十亀の表情に、申し訳無さを感じたが、警戒する心はそんなに簡単には懐柔されない。
「……クリスマス…、いつきの家に来ようかなぁ…。」
「え?うん……いいんじゃない?」
クリスマスは今まではお互い家族と過ごしていた。
十亀からクリスマスについて話されたのは初めてである。
「…ケーキはうちは25日だよ。」
いつきは梅宮から貰ったケーキの引換券を思い出した。
「…じゃあ、25日に来ようかな……。」
十亀はそう言うと、いつきの太ももから手を離した。
やっと強張っていたいつきの体から力が抜けて、その光景に十亀は目を瞑った。
あの日、いつきにキスをしてから、ずっと気持ちをぶつける様に抱き締めて同じ様にキスをしてきた。
そうすればいつきが自分の気持ちを分かってくれて、幼馴染では無くて男として受け入れてくれるかも知れないと願っていたから。
だけど実際は、いつきは離れていく。
幼馴染を辞めようとする十亀を拒む様に、いつきはいつも十亀のキスを受け入れてくれない。
いつきには好きな男が居る。
だけどその相手はクリスマスを一緒に過ごす様な相手じゃ無い。
十亀はそう考えると、口元に笑みが漏れた。
そして顔を上げていつきを見る。
こんな時に、笑って自分を見る十亀に、いつきはドキリとした。