【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
久しぶりに聞く梅宮の声にいつきは苦笑した。
何故苦笑したか。
それは自分が会おうとしていなければ、梅宮とはこんなにも会わないのだと分かったから。
「久しぶり、元気だった?」
「……先輩も……。」
十亀に好意を寄せられてから、いつきは梅宮に会いづらかった。
別にただの片思いだ。
何も悪い事をしている訳ではないけど、自分の恋心が汚された。
そんな小さな怒りは十亀に持っていた。
「次は何植えるの?」
「そろそろチューリップです。」
「へー、春が楽しみだね。」
楽しそうに笑う梅宮に、いつきは顔を俯かせた。
「でも寂しいです…花が咲く頃に先輩は卒業しちゃうので…。」
この花壇がチューリップで埋まる頃、梅宮はもうこの学校に居ないだろう。
そして隣の花壇に野菜苗が植えられる事もなくなる。
自分達はこうして横に並ぶ事はもう無いのだ。
初恋とは呆気なく終わるものだといつきは思った。
元々梅宮を見ているだけで幸せだった恋だ。
これ以上の欲は出さずに、いつ思い出しても甘い気持ちだけが残る様な。
そんな思い出で終わっても、何も変じゃない。
きっとこの胸の痛みは時間が解決してくれる。
そう思って、いつきは笑みを浮かべて梅宮の顔を見た。
「……っ…。」
梅宮と目が合った瞬間に見えた表情は、驚いた様にいつきを見ていて、何処かその表情は暗かった。
「……先輩、どうしたんですか?」
「……いいや…。」
思わず動揺して聞いてしまった。
いつきの言葉に答えると、梅宮は制服のポケットをゴソゴソと漁り出した。