【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
「っ条…もう止めて……。」
理由はたった1つ。
いつきがそれを拒むからだった。
もう一度いつきにキスをして、大きく熱い息を吐いて、十亀はいつきから唇を離した。
見下ろしたいつきの顔は、涙を溜めて全身で十亀を拒否しているのが分かる、
自分はこんな顔をしたいつきに無理矢理キスをしていたのか。
十亀の心の中に嫌な痛みが走った。
いつきは言葉にしなかったら、十亀を傷付けていないと思っているかもしれない。
でも実際に言葉にはしなくても、その表情や涙を溜めた目が十亀を拒否していると分かったら、簡単にこの胸は傷付くのだ。
だから十亀は今日もそれ以上いつきに触れない。
彼もまた葛藤していたのだ。
この渇いた気持ちはいつき以外に埋められないともう知っている。
兎耳山と一緒にいても満たされないこの気持ちの部分は、間違いなくいつきへの『恋慕』の気持ちだった。
「…… いつき…。」
十亀は力強くいつきを抱きしめながら、耳元でいつきの名前を呼ぶ。
早く自分を受け入れて、自分以外に誰も見ないで欲しい。
じゃければ、この気持ちがいつか爆発して、いつきを簡単に傷付けてしまいそうだ。
夏が過ぎて、十亀の気持ちが恋心だと分かった頃。
もう季節は冬に差し掛かっていた。
花壇に花は咲いていなく、この時期は園芸部の活動は殆どしていない。
何も咲いていない花壇をいつきはボンヤリと見ていた。
「いつき。」
ずっと聞きたかった声が、いつきの背後から聞こえた。