【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
初めて抱き締めたいつきは想像より柔らかて、少し力を入れたら壊れてしまう様な、そんな不安にかられた。
たいしたキスじゃ無い。
ただ抱き締めていつもより唇が触れる時間が長かっただけだ。
本当はもっと体を密着させてその唇を割って、自分の舌を絡ませたいと願った。
『ちょっとっ……離してよ条…。』
でもそんな気を使ったキスでさえ、いつきは拒んだ。
いつきの目線と店にある父親の気配に、十亀もまた少し気が逸れる。
だけどこれだけは言える。
十亀はもう『幼馴染』と言う、便利な言葉はうんざりだった。
幼馴染はキスを出来ない。
なら、そんな形は今すぐにでも捨てられる。
それがいつきを傷付ける事になっても。
もううんざりなんだ。
都合の良い立ち位置で側に居られるポジションは、どうしてもその先の欲望は満たせない。
この先を許されるのが幼馴染じゃ無いと言うなら。
喜んでその都合の良い立ち位置なんて捨てられる。
例えそれでいつきが傷付いたとしても、そんな事どうでも良かった。
都合の良い立ち位置を望んで、十亀を縛っているのはいつき本人なのだから。
だからコレは自分から変えられる環境だった。
十亀が望んで行動すればもう、その先に都合の良い幼馴染は居なくなる。
だけど十亀が居なくなる事は無い。
この先は恋人として、いつきにとっては唯一無二の。
そんな存在になれればいいのだ。
いつきに感じてるこの感情は『友情』ではなくて、紛う事なき『情欲』だ。
そしてその情欲は、他の男の存在を決して許さない。