【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
祭りの準備に合流しなかったのも、ちょっとした反抗心だった。
当たり前の様に側に居た自分が居なくなったら、いつきは寂しがるだろうか。
たかがキスを受け入れてくれなかっただけでも、十亀はいつきを試さずにはいられなかった。
自分と同じ気持ちでいつきも居て欲しい。
当たり前の様に側に居て、その場所は誰にも譲りたくない。
祭りの屋台は、毎回場所が決まっている。
小さい時から毎年行っている十亀は、何処に誰の屋台があるかすぐに分かる。
そして夕方になり、そろそろいつきの父親が飲み出して、屋台はいつき1人になるだろう。
そんな頃を狙って、十亀はいつきの居る屋台に向かった。
『お金払って下さい。』
いつきの声はすぐに十亀に聞こえた。
十亀はいつきを見て、悲しそうに唇を噛み締めているいつきを見て、背中にゾクリと悪寒が走った。
自分の大切なモノを汚された様な。
いい様の無い怒りが全身を覆った。
頭の中はとてもクリアで、自分の縄張りに入って来た異物の肩をグッと掴んでいた。
『お金払ってぇ…。』
すぐにでも駆逐したい気持ちを、いつきの前で堪えるのに体が震えた。
心配そうな顔をしているいつきが、それ以上顔が歪まない様に、十亀はオレンジ色のスカジャンを着た奴らを祭りから遠ざけた。
それからはただ、怒りに任せてそいつらを殴り倒した。
いつきにあんな顔をさせた罰。
いつきの唯一の祭りを汚した罰。
馬鹿な嫉妬心でいつきの側に居なかった自分への怒り。
全ての感情をぶつける様に、十亀は男達を殴っていく。