【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
だから中学に入り、自分と違う制服を着たいつきには違和感しか無かった。
初めて過ごす場所が変わるいつきを、十亀は不思議な気持ちで見ていた。
だけど、学校が終われば過ごす時間は変わらないはずだ。
この店に来れば、いつきも居ておじさんも居る。
そしていつもの様に過ごしていれば、いつきも変わりなく笑って自分の側に居るはずだ。
十亀にとって、中学生活は楽しくもつまらなくも無かった。
ただいつきの居ない時間を淡々と過ごす。
その為だけの時間だった。
学校を終えていつきに会いに行く。
それだけを考えて過ごす中学生活に、たいした思い入れも無かった。
ただ、周りはそんな風に十亀を見なかった。
背が高くなり、ガタイの良い十亀は沢山のスポーツ部から声がかかる。
部活をしたらいつきと会う時間が少なくなる。
そんな気持ちから、十亀は部活には入らない。
同時に、異性から好奇な目で見られる方も多くなった。
何故か帰り道が一緒だと同じ時間に帰る同級生。
いつきとは全然違う目で見られる。
その目線は十亀にとって居心地の良いモノでは無かった。
変に拒否して余計に好奇な目で見られるのが面倒だった。
だから近付く異性に対して、十亀は何も言わなかった。
ただ、他の異性と過ごす時間。
喋り方。
十亀への接し方。
全てをいつきと比べてしまい、逆に居心地の悪さと不快感だけが十亀に募っていった。
『おかえり、条。』
制服のまま帰ってきても、そう笑顔で迎えてくれる、いつきといつきの父親に、いつも心が満たされる。