【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
『誰か好きな男居るのぉ?』
そう言った時に、目が泳いだいつきを目を思い出して、十亀はゆっくり目を瞑った。
答えは、素直ないつきの態度ですぐに分かる。
いつきには好きな男が居る。
自分の他に。
その現実をどうやって受け入れればいいのか…。
十亀には全くわからなかった。
(いつきが俺だけのモノじゃなくなる…。)
その間違った独占欲は、もうずっと持っていたモノで、自分の欲を見直すには到底過ごした時間が長すぎた。
小学生まで当たり前の様にいつきと過ごしていて、いつきが自分の特別だと気が付いたのは、高学年の頃だった。
いつきの母親が病気で長期入院する事になった。
十亀の記憶でも、いつきの母親は余り体力がありそうも無くて、その頃には既に、母親よりも店の手伝いは十亀がしていた。
『ありがとうね。条くん。』
それでも、手伝いをする度にくれるラムネ瓶と、いつきの母親の笑顔は十亀の記憶にも幸せな時間として残っている。
子供の自分達には、余り詳しい事情は教えて貰えなくて、それが大人の気遣いだと分かっていても、不安が募るのは当たり前だった。
いつきがしきりに店の手伝いをする様になったのはその頃で、家事も積極的にやり、子供ながら献身的に親の手伝いをするいつきを見て、十亀は思った。
ああ…、俺はいつきの側に居る為に幼馴染をしていたのだ。
初めて、そんないつきを愛おしいと思い。
初めて、いつきを守るべき存在だと十亀は気が付いた。