【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
「……送ろうか?」
「…大丈夫です…。」
皆んなと同じ優しさは要らない。
欲しいのは、こうして2人だけで会える時間と。
自分だけに向けられる梅宮の表情が欲しい。
表情豊かに色んな人と接する梅宮が、ほんの一瞬だけでもいい。
自分だけに向ける表情があるなら、それが欲しい。
それが随分と欲張りな願いと分かっているから、いつきは苦笑した。
誰か1人のモノにならないから、彼は梅宮一なのだろう。
「送る位させてよ。」
断られるとは思っていなくて、梅宮は少し戸惑った顔をしている。
「なら、高架までお願いします。」
いつきがそう言うと、梅宮は安心顔をして少し笑った。
今はそれだけの笑顔が自分に向けられているだけで、満足だ。
ホースを2人で片付けて、夏休みの学校を梅宮の隣で歩く。
こうして中学2年生の夏休みが終わった。