【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
2階から中庭に目をやり、いつきは思わず足を止めた。
相変わらず周りには人が沢山いて、その中心で梅宮は笑っている。
まだ幼なさが残る笑顔なのに。
何処か大人びた目線で周りを見る。
あんなに不思議に人を惹きつける人を、好きにならない人は居ないだろう。
いつきはまるでどんな場所でも、梅宮が目に入るのは当たり前だと思った。
それほど彼女には梅宮は特別だった。
その時ふと梅宮が目線を上げた。
いつきが居る2階を見た様で、一瞬目が合った気がしていつきは胸が高鳴った。
『ことはー!!』
『っー。』
見上げた梅宮の顔は微妙にいつきから逸れていて、その笑顔はいつきの近くにいた、橘ことはに向けられた。
いつきがことはを見ると、ことはは大声で呼ばれた事が気に入らなったのか、とても迷惑そうな顔をして梅宮を無視した。
無視されても梅宮は、ことはに一生懸命に手を振っている。
梅宮とことはが同じ施設で暮らしている事は知っている。
きっと本当の家族の様に仲が良いのだろう。
まるで自分と十亀の様に。
だけど梅宮は、そんな十亀といつきの事を何も気にしていない。
いつきは、梅宮がことはの名前を呼ぶ度に胸が痛むのに。
優しく頭を撫でる梅宮が、自分の事を好きじゃないと教えてくれる様で…。
いつきは目を伏せると涙が一雫流れた。
いつきの涙の意味を、梅宮は勘違いしているだろう。
幼馴染の為に胸を痛めていると思っている梅宮の手が、頭から頰に触れた。
少しだけ流れた涙を拭うと、すぐにその手は離れていく。