【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
「無理矢理入れられたのか?」
「……いいえ…楽しいらしいです。」
いつきの表情から無理矢理チームに入れられたのかと思ったら、そうでは無いらしい。
少しホッとして、梅宮は顔をいつきから離した。
「楽しんでるんなら、本人の好きな様にさせてやった方がいいんじゃないか?」
兎耳山が入って、獅子頭連の勢力が上がって来たとは聞いていた。
そして最近入ったメンバーが、更にその勢いに乗っていると。
どうやらその人物は、いつきの幼馴染かもしれないと梅宮は思った。
いつきは心配している様だが、それは本人が決める事で、いつきに出来る事なんて何も無いのだろう。
だからいつきは余計に悩んでいるのが分かって、梅宮は拳を強く握った。
「大切な幼馴染なんだな。」
「……はい…、凄く大切なんです。」
そう悲しそうに笑ったいつきの頭を、梅宮が軽く撫でた。
その梅宮の手でいつきはまた顔を上げる。
「困った事になったら、すぐに俺に言えよ。」
そう優しく笑って言った梅宮の顔を見て、今度こそ目に涙が溜まった。
そう言ってくれた梅宮の気持ちが嬉しかったのと。
男の幼馴染を大切と言った自分に対しても、いつもと変わらない梅宮の態度が悲しかったからだ。
(私は、梅宮先輩が大切だと思っている女の子が居たら、橘さんにも嫉妬するのに。)
梅宮の手が頭から離れて、いつきは目を伏せた。
そして、梅宮とことはの事を思い出す。
教室から音楽室への移動中に、中庭で梅宮を見かけた事があった。