【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
十亀の体から離れようと逃げようとしたが、すぐに後ろの洗い場にぶつかった。
「うっ……。」
腰をぶつけた痛みが口から漏れると、十亀の唇が離れた。
『……俺はずっと幼馴染って思って無かったよぉ…。』
そう言った十亀の目を見て、いつきは大きなショックを受けた。
じゃあ、自分達は何故毎日一緒に時間を過ごしていたのだろう。
『いつき、何でキスを嫌がったの?』
十亀の手が腰から離れた。
『誰か好きな男居るのぉ?』
最後に会った十亀との会話を思い出して、いつきは大きくため息を吐いた。
その時の十亀の言葉には、結局何も答えられなかった。
ただ真っ直ぐに見て来た十亀の顔から目を逸らした。
十亀ならきっとそれだけでもう分かっただろう。
その日十亀はスカジャンを掴んで家から出て行くと、それきりいつきの家には来なくて、気が付けば夏休みが終わろうとしていた。
モタモタと水やりのホースを片付けてると、背後から声を掛けられた。
「もう帰るの?」
振り向くと、そこには梅宮が立っていて、いつきは梅宮を見て目頭が熱くなった。
顔を顰めたいつきの様子に、梅宮は笑顔をやめて真顔になった。
「なんかあったのか?」
そう言って近付いて来る梅宮に、いつきは顔を伏せて泣きたい気持ちを堪えた。
「……幼馴染が…獅子頭連って言うグループに入ったみたいで…。」
そう暗い顔をして話すいつきに梅宮は顔を覗き込んだ。