【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
いつきに袖を掴まれて、十亀はいつきの方を見た。
洗い物も終わって、掛けてあるタオルで手を拭く。
いつきは顔を俯かせていて、十亀の袖を掴んでいる手も少し震えていた。
『なら私は?条は私と居て楽しく無かったの?あそこで集まったり何してるの??毎日怪我ばっかりして争い事ばかりなんじゃないの??』
一気に捲し立てたいつきの顔は歪んでいた。
心配だった。
十亀が兎耳山に連れて行かれてからずっと。
悪い噂しか聞かないのに、十亀はその仲間達を楽しいと言う。
そんな仲間達とは手を切って欲しい。
いつきはそんな風に思っていた。
『……………。』
十亀はしばらくいつきの事を黙って見ていた。
チラッとドアを見て、いつきの父親が近くにいない事を確認する。
そしていつきの腰を掴むと、自分の方にいつきの体を寄せた。
『!っ何?』
ビックリしたいつきが見上げると、十亀はそのままいつきにキスをした。
何が1番驚いたかと言ったら、今まで十亀はこんなキスをしてこなかった。
体に触る事もなく、唇が一瞬だけ触れるキスとは違って、今は十亀の腕が背中に周り、深く唇を押し付けられる。
『ちょっとっ……離してよ条。』
いつきもまた店に居る父親を気にして、声を荒げる事はしなかったが、強く十亀の胸をおしのける。
『いつきは友達じゃないじゃん。』
そう言った十亀の言葉に、いつきはショックな顔をした。
『友達でしょ?幼馴染じゃない。』
眉毛を思い切り下げて言ういつきに、十亀はまた顔を近付けてキスをする。