【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
少し気まずかった食事を終えて、いつきの父親はまた店に戻って行く。
そしてまた入れ替わりでいつきが現れると、今度はいつきが食事をする。
十亀はもう食べ終わっていたので、いつきは自分の分の焼きそばをお皿に盛った。
いつきが食べている間に、十亀は洗い物を始めた。
まるで当たり前の様に、自分の家で家事をする十亀を見て、いつきはいつも助かっていた。
母親が長く入院をしていて、父親との2人だけの暮らしより、十亀がこうして居てくれる事が、いつきの心の安息にもなっている。
いつきも食べ終わり、洗い場に自分の食器を持って行くと、十亀の横に立った。
横に来たいつきを見下ろす十亀に、今度は顔を合わせた。
『………条…、今楽しい?』
この頃には飲屋街ではオレンジのスカジャンはよく見るし、その仲間達が『オリ』で溜まっている事も知っている。
段々と増えてきたオレンジ色の中に十亀が居るのが、どうしても納得出来なかった。
『……うん、楽しいよぉ…。』
心配そうに見上げるいつきに対して、十亀は笑いながら言った。
その顔は確かに、いつも楽しく遊んでいた十亀の顔だった。
『でも、あの人達よく飲屋街で問題起こすし…。』
『…そんな奴らも確かに居るね…、でも俺ちょーじと居るの楽しいんだ。』
十亀は初めて出来た友達の様に兎耳山の話をする。
十亀のその話に、いつきの顔は段々曇っていく。
なら、自分と居た時の十亀は、楽しくなかったのか。
そんな気持ちが湧き上がって来て、いつきは十亀の裾を掴んだ。